BMW・3シリーズが車好きにとって最強の選択肢であるこれだけの理由
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日本におけるBMWの定番モデルである「3シリーズ」。
今となっては希少性はないに等しく、車に無知な人であってもブランドやネームバリューだけで購入を検討してしまうほどのポピュラーなモデルです。
車を少し知る人からすると、軽薄な車とさえ感じるかもしれません。
しかし、3シリーズの良さとは車を知れば知るほど理解が深まります。
車好きが行き着くところまで行って、最後に1台だけ選ばなければならなくなった時に選ばれるような、そんなとびきりに無難な車こそが3シリーズなのです。
著名な自動車ジャーナリストのジェームス・メイ氏も、もし車を1台しか持てないのならばという質問に対して3シリーズ(320i)と答えています。
私自身、全く同じ意見を持っていたためこのジェームス・メイ氏の意見を聞いて居ても立っても居られなくなり、この記事を書き始めた次第です。
BMWにおける3シリーズとは
BMWの歴史やその絶対的ブランド、そしてそのブランドが崩れ行くさまは過去の記事でもバラバラと掲載しているので深くは説明しません。
BMWにおける3シリーズとは、駆け抜ける喜びや究極のドライビングマシンという言葉を表す一種のアイコンであり、BMWが持つ優れたハンドリングを安価に手に入れることが出来る唯一の手段でした。
BMWの主力車種は3シリーズの上位モデルにあたる5シリーズであり、3シリーズは弟分のコンパクトセダンと言う位置付けです。
そのためもあってか、今のモデルを見ても30年以上前のモデルまで遡ろうとも「乗った感じ」は3シリーズと5シリーズの間に絶対的な壁があります。
高級感や快適性、長距離を楽に移動できる道具としての性能は、圧倒的な大差でもって5シリーズの方が高く、そもそもメーカーとして3シリーズにそうした性能を高く求めていないことがわかります。
3シリーズには楽しさを、5シリーズには優れた走行性能と高級感の両立を求めていることはすべてのモデルを乗ってきた実感としてハッキリと感じ取ることができます。
最近では3シリーズの走る楽しさにも陰りが見えてきており、そのハンドリングもエンジン特性も過去のモデルに劣ります。特にエンジンに関してはあまりにも酷い出来で嘆かわしい限りです。
しかし、今なお人気を維持し続ける理由は他よりはマシだからという非常にネガティブな理由に尽きるでしょう。
なぜ1台だけ車を選ぶなら3シリーズなのか?
さて、世の中には多くの車種があります。
私も他人よりは多くの車を試乗あるいは所有してきた経験がある自負があります。しかし、そのなかでもなぜ3シリーズを選ぶのでしょうか?
その理由は冒頭にもあるように究極の「無難さ」にあります。
無難と言うことはつまり、欠点が少ないということです。
優れたGTカーを求めるのであればベントレー・コンチネンタルがあります。
優れた快適性を求めるのであればロールスロイス・ファントムがあります。
走る楽しさを求めるのであればポルシェ・911があります。
人をたくさん乗せたいのであればボルボ・XC90があります。
安くて便利で楽しい車が欲しければVW・ゴルフGTIがあります。
しかし、そのいずれにも何かしら欠点があるものです。
どれか1台しか持てないとしたら?
あらゆる生活シーンに対応できる車を選ばなければならないとしたら?
最低限の走行性能や安定性は欲しい、走りも楽しみたい、価格が高すぎてはいけない、維持費が高すぎてはいけない、信頼性もほしい、快適性もほしい、実用性もほしい、燃費も良い方が良い、質感も妥協したくない、運転はしやすい方が良い、必要十分なパワーは欲しい。
車に求めるものは数多いですが、こうしたすべての要件をそれなりに満たしている車こそが3シリーズなのです。
最低限の走行性能と安定性、そして走る楽しさ
現行モデル、あるいは先代モデル(もっと言うともう一つ前のモデル)の3シリーズは、それ以前のモデルと比べてお世辞にも走っていて楽しい車とは言えません。
特にエンジンが環境性能を重視したターボエンジンになった先代以降の3シリーズはの出来はお粗末とさえ言えます。
エンジンフィーリング(音、吹け上がり、レスポンス)に大きな問題があるのです。ガンガン飛ばす分には気になりませんが、ゆったり走ろうとすると不快ですらあります。
停止状態からゆっくり加速しようとすると、ターボが十分に効いてくる回転数までトルク感がなく、そこから突然トルクが発生するかのような挙動をします。急激なトルク変動を伴う極めて不快な挙動です。
実際のトルクカーブを見る限り、圧縮比の低いエンジンながらもツインスクロールターボのお陰もあって低回転でもそれほどトルクが細くないはずです。しかし、実際の車の挙動やトルクの伝達はエンジン単体のトルクカーブを見てもあまりアテにはなりません。
エンジンとトランスミッション、そしてコンピュータによる制御次第で実際のフィーリングには大きな違いがでます。
これまでのBMWはこうしたフィーリングを非常に大切にしていましたが、残念ながら現行および先代モデルではそのBMWの根幹とも言えるフィーリングが損なわれているのです。
BMWの努力が垣間見える電動パワーステアリングも、残念ながら油圧に及びません。
しかし、その点を除けばよくできた車であり、以前のBMWを知らないユーザーからすれば十分に走りを楽しめる車と言えるでしょう。
また、走行性能にも妥協がなく安定した走りを楽しむことが出来ます。
この点では最近の日本車も少しは努力が垣間見えますが、特に評判の良いマツダでさえ足元にも及ばないというのが素直な感想です。
高すぎず、壊れにくく、維持もしやすい
3シリーズは新車では400万円から、中古車では4~5年落ち程度の比較的新しい車でも200万円程度から購入することもが出来ます。
また、BMWは販売台数が多く、そのなかでも3シリーズは高い比率を占めています。
つまり、同じ部品をたくさん作っており、3シリーズが長年熟成されてきたモデルであるという点を加味してもその信頼性はかなり高いレベルにあります。
昔は環境対策に起因してゴムや樹脂の質、あるいはインテリアパネルの接着が弱いなど明確な弱点がありましたが、年々改良が進んで今では基本的に故障知らずで乗ることができます。
また、国内での販売台数が増加したことや部品や車の流通システムの改良が進んだことから部品の入手性や価格も低減されています。
特に2リッターの320iなどを選べば、税金は安く燃費性能も高いことから十分に経済的と言えます。
320iであれば出力が抑えられた信頼性ある4気筒エンジンであり、部品の消耗や部品点数が少なく販売台数も多いため不具合や故障時の高額な修理のリスクも抑えられます。
大きすぎず、快適で質感もあり運転がしやすい
3シリーズは先述の通り快適性や高級感を求めたモデルではありません。
そのため、お世辞にも乗り心地が良い車とは言えません。
しかし、それでも世に溢れるコストパフォーマンスだけを追い求めて作られる多くの車に比べれば十分に快適です。
特に自身で運転している分には不快になるほどの乗り心地の悪さはないと言えるでしょう。
また、質感に関しても同じことが言えます。
BMWは昔から高級感とは無縁の存在で、デザインも保守的そのものでしたが、最近は少し改善が見られています。
それでもインテリアに関してはかなりチープで、ラグジュアリーなどのグレードを選択しなくては目も当てられません。
しかし、逆に言えばラグジュアリーを選択すればそれなりに不満のないインテリアを手に入れることができます。加えてラグジュアリーを選択することで、偽物のMバッジのついたMスポーツを選ぶ必要もなくなります。
ただし、ここまでの理由だけで考えるとどう考えても5シリーズを選ぶべきです。
なぜなら5シリーズは3シリーズに比べて圧倒的に高級感があり、極めて快適で、それでいてなお高い走行性能を誇るほとんど完璧に近い車だからです。
それでもなお3シリーズを選ぶ理由はその大きさにあります。
5シリーズは年々肥大化が進み、今となっては全長がほぼ5メートル、幅は1900mm近いです。
これだけの大きさになると、狭い駐車スペースでは取り回しに苦労し、折角駐車できても枠の中に納まらず、旅行先で狭い山道にでも入ろうものならすれ違うために大変な気を使うことになります。
その点で3シリーズは車体サイズの肥大化が進んでいるものの、今の時点ではまだ比較的コンパクトで日本の街中や旅行で訪れた狭い山道でもそれほど苦労することはありません。
情熱はいらない、これが3シリーズ
このようにBMW・3シリーズはあらゆる点において及第点以上の評価を与えることができる優秀な車です。
もし貴方が多くの車に乗ってきた歴戦の車好き(?)なのであれば、一度3シリーズを所有してみてください。私の言っていることがよく理解できるはずです。
どこか一点の突き抜けた性能や素晴らしさは持ち合わせていない情熱のない車です。それでも確かによくできた車なのです。
(BMWの駆け抜ける喜びを感じたければE46が50万もあれば買えるから足回りを全部リフレッシュしよう。6気筒を選んでも良いけど、2リッター4気筒でも恐ろしくスムースでレスポンスが良いよ。)
逆に言ってしまえば、あらゆる点において良い仕上がりを求めなければ選択肢は広がります。
例えば走行性能や安定性を求めないユーザーにとっては3シリーズ以上に良い選択肢がたくさんあります。
多くの自動車ユーザーは走行性能や安定性を求めておらず、そもそもそれらが多少悪くともネガティブな印象を持ちません。
例えば安定性の低い車の代表格は背の高いSUVです。
日本におけるSUV人気をリードする存在といえば高い走行性能やデザインで話題になったマツダ・CX-5や絶対的な人気を誇るトヨタ・ハリアーなどがあります。
この2車種は、新型ですら乗っていて気分が悪くなるほどふらふらと安定性に欠ける2台ですが、多くのオーナーはその不安定さにそもそも気が付いていないはずです。
これは車だけに言えることではありません。
あらゆる業界において、製品の良し悪しを追及するコアなユーザーは少数派であり、大多数はそうではないライトなユーザーなのです。
そうしたライトなユーザーにとって、3シリーズは手頃にBMWバッジを手に入れられる道具でしかないかもしれません。
しかし、コアなユーザーにとっては非常に深い満足感を与えてくれる優れた製品なのです。