車は好きだが日本車にしか乗ったことがない。
そんな人に向けて輸入車メーカーの方向性や考え方の違い、車の違いを雑に解説していきます。
何が言いたいかというと、輸入車を知りたいなら快適性重視にしろ走行性重視にしろとりえあず5シリーズがオススメっていうこと。5シリーズにしばらく乗って、評価軸を作るとどんな車も適切に評価できるということです。
経緯
はじめに、この記事を書こうと思った理由を説明します。
私は根っからの車好きで、車に関する情報を普段から読み漁っています。その範囲はニュースからSNSの個人の発言まで幅広いです。
そうした情報に触れていると、輸入車を知らない人が書いた記事や発言に違和感を感じることがあるのです。
GT-Rの後釜に一部の911以外のポルシェを選ぶでしょうか?
ロードスターの後釜にアウディやメルセデス各車を選ぶでしょうか?
真逆の選択です。
日本車の立ち位置
輸入車を知る前に、世界における日本車の立ち位置を説明します。
日本車は優秀で、日本には日本車があふれています。日本に住む人が日本車を選ぶのは間違いのない無難な選択です。
だからこそ、車好きであっても日本車の世界しか知らない人が大勢いるのです。
日本車は一部の突き抜けた存在を除けば極端に実用性を追求しています。マーケティングの成果を柔軟に取り込み、高い品質の洗練された車を作り出しています。
悪く言えばブランドや哲学がなく、商売としての車作りに徹しています。
デザインはアジアの車らしく、統一感や伝統よりも奇抜さを重視しています。しかし、その一方でデザインにコストを割かないためにチープでちぐはぐな仕上がりになることも間々あります。
マーケティングとして一部の車好きに訴求する製品を作ることはありますが、基本的に既存の大きな需要に応えることに重きを置いています。
例えばスズキのスイフトは世界的にも優秀で楽しいハッチバックとして知られていますが、スイフト以外も同様の考え方で作られているかと言えば、全くそうとはいえません。
もちろん、日本以外の自動車メーカーが必ずしも筋の通った車作りをしているわけではありません。しかし、日本車メーカーほど顧客の求めるものに偏重した車作りをしているメーカーもないのです。
これは決して悪いことではありません。
車に乗る大部分の人は車を移動の道具としか考えておらず、車好きなど限られた一部なのです。
この大部分に応える高品質な車を作り続けているからこそ日本車が世界にあふれているわけです。これは簡単なことではなく、同じ路線をとる韓国車メーカーが日本車メーカーに簡単に追いつけていないことからもわかります。
走って楽しい車を作るメーカーはどこ?
優れたシャシーを持ち、路面からの情報やステアリングの操作感、ペダル類の操作感に優れたメーカーを紹介します。
BMW
走って楽しいメーカーの筆頭はBMWです。
あらゆる自動車メーカーのなかで最も優れたブランドを持ち、そのブランディングは自動車業界のみならずさまざまな業界で参考にされるほどです。
このブランドを築いたものこそ走る楽しさ、BMW的にいえば駆け抜ける喜びです。
近年の電子制御化によるネガティヴな意見は聞かれるものの、まだまだ高い次元で走る楽しさを持った車を作り続けています。
日本では3シリーズが主力ですが、世界的には5シリーズが主力製品です。
5シリーズは、同クラスのセダンの中で世界屈指の出来で、世界最高のセダンの名を欲しいままにしていた時期もあります。
日本車との大きな違いは走る楽しさと快適性の共存にあります。
日本車メーカーがたまに生み出すスポーツモデルはやや極端で、乗り心地は悪く演出過剰です。
しかし、BMWは快適です。無理に曲がればかなりロールもします。
乗り心地は硬いと言われることもありますが、安楽な移動ができる程度には快適です。静粛性も十分です。それでいながら、ちょっとした操作が気持ちよく、楽しく走ろうとすればそれに応えてくれるのです。
限界を超えても挙動は穏やかで、高い操作性もあってスペックよりフィーリングをとことん追求していることがわかります。
まさにスポーツセダン。スポーツカーではなくスポーツセダンなのです。
決してサーキットや峠を飛ばす車ではなく、高いシャシー性能と素晴らしいフィーリングが普段のドライブをグッと盛り上げてくれる。そんな存在です。
快適な旅のお供や安楽な日常の移動、ビジネスシーンにも合った雰囲気を持つのがBMWです。
ポルシェ
BMWに続くのがポルシェです。
よくフェラーリと並んでスーパーカーのような扱いを受けますが、それは極々一部のモデルの話です。
特にスタンダードな911やそれ以下の車種では、BMWと同じように楽しく操れるスポーツカーを作り続けています。
BMWとの違いは、BMWがセダンやワゴンといった実用性のある車体と快適性をそれなりに重視しているのに対して、実用性は置いておいて、快適性も少し諦めて、ポルシェはスポーツカーとしての車作りをしているという点です。
それでも日本車メーカーがたまに作る演出過剰のスポーツモデルよりは快適です。BMWに比べれば、排気音も露骨に大きいです。
BMWより楽しむ比率をグッと上げた趣味の車がポルシェです。
フランスとイギリスとイタリアの9メーカーについて
どこに挙げるべきが悩むのがフランスの3メーカー(プジョー・ルノー・シトロエン)とイギリスの3メーカー(アストンマーチン・ケーターハム・ロータス)とイタリアの3メーカー(フィアット・アルファロメオ・フェラーリ)です。
フランス車といえば、ハッチバックです。楽しい小さなハッチバックといえばフランスです。
「走って楽しい車を作る」という点においてはプジョー・ルノー・シトロエンを挙げた方が良いのかもしれません。
しかし、実際に乗ってみるとわかるのですがこの3メーカーが作る車は基本的に実用車なのです。日本車とそれほど変わりません。
シャシーが素晴らしいなどと言われますが、基本的にはデザインに優れ洗練度と耐久性がやや落ちる日本車。といった感想を多くの人が抱くでしょう。私自身がそう感じました。
もちろん楽しさや走りを重視したスポーツグレードが存在します。
しかし、そちらを主軸に評価するのは少し違うかなということで、ここでどっちつかずな評価をしています。
イギリスの3メーカーのうち、ケーターハムやロータスはスポーツカーを作るメーカーとして多くの人が知るところですが、規模が小さいためここでは割愛します。
アストンマーチンも規模が小さいですが、知名度は抜群です。
このアストンマーチンのポジションは、あえて言うなればポルシェに近い所にあります。
決してスペックやサーキットでのタイムが優れている車ではないですが、エンジンサウンドや操作感と言ったフィーリングに重きをおいた昔ながらのスポーツカーを作っているメーカーです。小さなメーカーだけあって、特にインテリアの質は低く、走るのは楽しいものも快適性はそれほど優れていません。
イタリアの3メーカーは少し特殊です。
フィアットは500のイメージが強いですが、基本的には実用車を作るという点でフランスの3メーカーに近い存在です。
アルファロメオは走る楽しさを重視しているかと言われると、実際はそうでもありません。操作感があやふやで、挙動も安定しない洗練されていない車が多いです。
フェラーリはスーパーカーに分類されますが、実際に得られる感覚としてはスポーツカーに近いです。もちろん優れた性能は持っているものの、それ以上に感性に訴えかける点を重視しているように感じられます。
ここであげた9メーカーはあえて分類するのが難しいため、ここでまとめて紹介しています。
乗ってて快適な車を作るメーカーはどこ?
次に、走る楽しさは置いておいて、乗っていて快適な車を作るメーカーを紹介します。
安楽で快適な移動手段。
日本車メーカーにおいてはレクサスの一部車種やトヨタのクラウンなどもここに含まれるかもしれません。
メルセデスベンツ
安楽で快適な移動手段の代表格と言えるのがメルセデスベンツです。
BMWのイメージに引かれてか、走る楽しさがそれなりにある誤ったイメージを持たれている人も多いです。
もちろん車としての基本性能は十分にありますが、BMWとは違って快適さを重視しています。とにかくA地点からB地点へ快適に移動することを追求した車作りをしています。
ある意味、トヨタ・クラウンの延長線上にあるような車を作っています。
おそらく多くの日本車ユーザー(特に走りに興味がない方)が乗って、一番違和感のない車を作っていると感じます。
とにかくどこにも尖ったところはなく、快適で楽チンなのです。
クラウンで満足しているという方が、ちょっと違ったデザインの車に乗りたいなという時にCクラスやEクラスを試してみると良いでしょう。
間違いなく後悔しない選択になるはずです。
メルセデスベンツには、AMGモデルというちょっと過激なモデルが存在します。
こっちは走る楽しさがあるのでは?と思われる方もいそうですが、それはちょっと違います。ごく最近のAMGは段々と走りに力を入れていますが、AMGは基本的に凶暴性を重視しています。
過剰でアンバランスなエンジンパワーや悪すぎる乗り心地など、「走って楽しい」というよりは過激なアトラクションに近いです。
アウディ
メルセデスベンツに次いで安楽な車を作っているのがアウディです。
ラリーやオシャレなデザインのイメージが強いという方も多いでしょう。
アウディは元々、質実剛健で地味な車ばかりを作っていました。お堅い実用車です。そんなアウディがオシャレなデザインと高い品質を持って近年では大躍進しています。
車作りとしては、メルセデスベンツやフォルクスワーゲンのような実用性を重視したものです。実際にフォルクスワーゲンと車体を共有しているものも多いです。
スーパーカーのR8も、昔のNSXのように実用性あるスーパーカーとして評価を得ています。
デザインはオシャレなものの、欧州では「軽薄」「ミーハー」というイメージも付きまとっています。
あまり車に興味はないけどオシャレだからと選ぶ人が多いメーカーです。
そんなわけで、走る楽しさは感じられません。洗練された良い車ですが、特にこれといって優れた点もないというのが素直な感想です。
メルセデスベンツやBMWと同じように、あらゆるシーンに対応できる無難な車を作っています。
ボルボ
ボルボは日本でも比較的多く流通しているものの、車好きが興味を向けることはあまりありません。
日本車と言うレベルの高い基準を持った日本人にとって、小さなメーカーが作った車はどうしても見劣りしてしまうのです。
それではボルボの車がどうかというと、極めて安楽さに偏った車を作っています。
例えばステアリングなどへたな日本車以上に軽く、スカスカです。
操作感はいまいちですがデザインは素晴らしく、特にインテリアに関しては超高級車を除けば随一の出来といえるでしょう。
メルセデスベンツやアウディと比べた場合、乗り心地や洗練度において見劣りするものの、最近では段々とそのレベルも上がっています。
さいごに
最終的にドイツの4メーカーにフォーカスを当てたような形になってしまいました。
逆に言えば、この4メーカーはポジションが明確なメーカーと言えるわけです。
- 普段使いが出来て楽しい車が良いならBMW。
- 楽しさを重視するならポルシェ。
- 快適ラクチンがいいならメルセデスベンツ。
- 快適ラクチンでオシャレがいいならアウディやボルボ。
ちょっと雑な評価ですが、おおむねこのような評価で間違いがないと思います。
そのなかでも、走る楽しさも快適性も高次元でバランスが取れ、価格も現実的な5シリーズは輸入車の評価軸を持つために最適な1台です。
EクラスやA6を選んでしまうと、やや快適性に偏り過ぎてしまいます。
中古の安い5シリーズでも構わないから、まずは乗ってみてほしいなぁと個人的には思います。
輸入車は高価で壊れやすいイメージから、車好きなのに日本車しか乗ったことがない方や数少ない輸入車にしか乗ったことがない方が多いものです。
そのため、こうした輸入車の客観的な評価を持たずに偏ったイメージを抱いてしまう場合があります。
実際に購入を踏み切る際にも舞い上がってしまって適切な評価ができない場合があります。
国産車や国産車の一般的なカスタムで得られる「走りの良さ」とBMWやポルシェがノーマルで持つ「走りの良さ」は全くの別物です。
だから、走りを重視する人がBMWやポルシェを体験して感動することもあれば、逆に「なんか違う」と感じることもあるでしょう。
もしあなたが車好きで輸入車への乗り換えを検討している場合、
是非色々なメーカーの車を乗り比べてみることをオススメします。
日本車とは違った魅力がどのメーカーにもあるものです。
走りなんてどうでも良いという人がポルシェに乗って感動して宗旨替えするかもしれません。逆もまた然りです。
同じ快適性重視でも、同じ走行性重視でも、日本車と他国のメーカーの車は違いがあるものです。
迷ったら、とりあえず5シリーズ。