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BMW雑学 最強のブランドの大転換、今のBMWと昔のBMW

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2020年1月15日 加筆修正

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過去にBMWブランドは最強であるいう記事をあげました。

diy-kagu.hatenablog.com

BMWの大変革

BMWは業界を超えてブランディングの手本とされてきました。

しかし、その強いブランドを築き上げた時代はもう終わりました。その頃のBMWはもうありません。

具体的にどこで終わったかというと、2001年の7シリーズ(E65)デビューかもしれないし、ほぼ同時期のローバー買収前後の取締役の入れ替えだったかもしれないし、更に数年後の駆け抜ける喜びを捨てた時からもしれません。

BMW 7 Series E65

「保守的だが攻撃的」の終焉 - クリス・バングルによるデザイン

BMWを2000年以前より好きでいる方なら一度を耳にしたことがある「クリス・バングル」。2001年にデビューした7シリーズを皮切りに、Z4、5シリーズ(E60)、3シリーズ(E90)と展開されたBMWのデザインを担当したチームを率いていました。

BMWのデザインというのは、常に保守的だが攻撃的であり続けました。例えばその集大成となってしまったE46やE39を見てみましょう。

2005 BMW M3 E46

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最近のBMWしか知らない方からすると、地味で古臭いというような感想が浮かぶでしょう。

まさにその通りです。

 

近代のBMWのデザインというのは、保守的(クラシカル、地味、先進性に欠ける)でありながら、攻撃的(無骨さ、強さ、雄々しさ、スポーティ)な印象を感じさせるデザインであり続けました。

このデザインに、駆け抜ける喜びが組み合わされることで、初めてBMWの車と言えたわけです。

 

それが激変したのはクリス・バングルによるデザインが採用され始めた2001年からとよく言われます。ただ、クリス・バングルを諸悪の根源のように言うのは全くの間違いで、そんな記事を載せているWebサイトの情報は信用するに値しません。

BMWには有名な取締役会(フォアシュタント)が存在し、デザインにおいてもデザイナーが提示する複数のデザインから取締役会が採用・不採用を決定します。このフェーズを何度と繰り返して初めてBMWのデザインは決定されます。

BMWデザインを破壊したのはだれか、という考えは全く無意味なものですが、誰に責任があるかと言われれば、それはクリス・バングルではなく当時の取締役たちにあります。そもそもクリス・バングルはもっと前からBMWのデザインに関わっていましたし、新しいデザインの先駆けとなった7シリーズのデザインに関しては否定的だったと言われています。

BMWの取締役会のトップにはヘルムート・パンケがいました。

ローバー買収とその失敗を経理サイドから支え、それから間もなくトップへと躍り出た有能な経営者です。

 

2001年の7シリーズから始まったデザインの変革は、これまでBMWブランドを築き上げてきた柱の一つである「BMWのデザインの伝統」を捨て去るものでした。

ローバー買収:経営の大失敗

このころ、BMWはローバー社を買収した経緯があります。

その後すぐに手放してしまうのですが、これは大失敗(ローバーがろくな自動車メーカーではないということは誰もが知っている)に終わり、大きな損失を出しました。

 

その後、BMWのトップを含めた取締役は大きく変わり、少し落ち着いたころに先述のヘルムート・パンケがトップへと立ったわけです。

BMWの大株主であるクヴァント家から取締役会に籍をおいているメンバーも入れ替わり、他の役員も入れ替わっています。正真正銘、BMWはこの時に変容してしまったのです。

 

BMWは北米で売り上げを伸ばしていたSUVの流行に追随するため、ランドローバーを含めたローバー社を買収したわけです。しかし、結局はランドローバーごとローバー社を売ってしまいます。肝心のランドローバーを売ってしまったことについて、いろいろと見方はあるでしょう。しかし、ランドローバー以外のローバーを引き取ってくれるところなどあったでしょうか?少なくともすぐには見つからなかったでしょう。

その後、結局はX5を独自に開発し、そのSUV(BMWはSAVと呼ぶ)は絶賛されることとなりました。

駆け抜ける喜びを捨てたBMW

BMWブランドの中心には常に「駆け抜ける喜び」がありました。

様々な言語に翻訳されながらもこのキャッチコピーが変わることはありませんでした。新車で販売される車には「Freude am Fahren(フロイデ アム ファーレン)」つまり「駆け抜ける喜び」のステッカーが貼りつけられていたものです。

 

しかし、2000年代後半からこのFreude am Fahren」はBMW EfficientDynamics」へと置き換わってしまったのです。このキャッチコピーは「エコ」+「駆けぬける歓び」という包括的コンセプトということになっています。

BMWはもちろんのこと、いまやすべての自動車メーカーが「エコ」に取り組むことは必須となっており、減税などの政策を含めて「エコ」が大きなセールスポイントとなるようになりました。販売店がエコを強調するのもわかります。100歩譲ってCMでも。しかし、ステッカーを、キャッチコピーを置き換える必要があったでしょうか?

 

偏見といわれるかもしれませんが、エコを理由に車を選ぶ人は、キャッチコピーがFreude am Fahren」であろうがBMW EfficientDynamics」であろうが気にしないのではないでしょうか?

むしろ、コアなBMWファンたちがこのキャッチコピーを気に掛けるのでは?

 

一体なぜこんな決定を下したのか私にはわかりません。

転換

「エコ」のため、電気自動車やハイブリットに向かうことは全く悪いとは言いません。BMWのデザインが変わったとしてもまだ我慢しましょう。しかし、駆け抜ける喜びはどうなるのでしょうか?

 

電気自動車やハイブリット化により、素晴らしいBMWのガソリンエンジンを味わえなくなるかもしれません。でもそれは仕方がないことです。石炭で走る列車がなくなったように、いずれガソリンで走る自動車もいなくなるかもしれません。

でも、それはBMWの魅力の本質とは言えません。

 

保守的かつ攻撃的というデザインはBMWの素晴らしい魅力のひとつでした。今なおE46やE39から新しいBMWに乗り換えられないオーナーは多いはずです。しかし、これもまたBMWの魅力の本質とは言えません。

それに、BMWも改心したのか、デザインがアグレッシブになったE90やE60、E65がモデルチェンジしたF30やF10、F01はやや保守的なデザインに回帰しています。

 

駆け抜ける喜びは?

今のBMWに駆け抜ける喜びがないとは言いません。

むしろまだまだ他社に負けない素晴らしい車たちを販売しています。しかし、駆け抜ける喜びが、車のセールスポイントの一つに落ちてしまった気がしてならないのです。

 

E46やE39、あるいはそれ以前のモデルから新しいモデルに乗り換えられないオーナーは、デザインだけがその理由でしょうか?

私は違うと思います。

新しくなったBMWを受け入れられない。そしてその理由は駆け抜ける喜びの価値をメーカー自ら貶めている現状を、薄々感じていてのことではないでしょうか。

 

試乗して感じませんか?

駆け抜ける喜びがなくなっていることに。

確かに他メーカーよりずっと「良い走り」をします。しかし、それまであった「駆け抜ける喜び」とはなんだか別物に感じてしまいませんか?

「良い走り」と「駆け抜ける喜び」は別物です。こうした感性に訴えかけるポイントは、うまく言語化することもできないし、メーカーの計り知れない努力と経験から成ります。

 

私は正直なところ、新しい車を買う時に今のBMWを選ぶ必要はないと思っています。BMWの「駆け抜ける喜び」は「良い走り」に落ち、絶対的なアドバンテージではなくなったからです。

メルセデスでも、アウディでも、ボルボでも良いと思っています。

ポルシェもフェラーリも駆け抜ける喜びを得られません。BMWとはスポーツカーとは違うのです。スポーツセダンという概念を生み出したのはまさしくBMWですが、BMWはスポーツカーではありません。快適なツーリングも楽しめるセダンなのです。

果たしてこのBMWのブランドが今後どう変わっていくのか。新しいユーザーを取り入れながらより大きく成長するのか。その時「駆け抜ける喜び」がどう変化しているのか。

きっとそのころには駆け抜ける喜びを愛したBMWオーナーはいなくなっているのかもしれませんね。

ブログを書いている人

カタミチ

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