家庭用電源で手軽に使える100Vの単相誘導モーターのベアリング交換を行いました。
約1年半前にも実施していますが、あれこれ試行錯誤するうちに無理な負荷をかけてベアリングを劣化させてしまっていたので交換します。
ベアリングの選び方
私が使用しているおんぼろモーターは三菱電機のスーパーラインSです。
使用するベアリングは、モーターに貼付されたシールに記載があります。
REARが6202、FRONTが6201と記載されています。
この4桁の数字はベアリングの寸法を表しています。ベアリングのメーカーを問わず、同じ品番のベアリングを選択すればOKです。
このようにモーター自体に記載があることが多いのですが、もし見つからない場合にはメーカーのホームページを探してみてください。モーターの品番で検索すると、交換用ベアリングの品番が見つかるはずです。
もしメーカーのホームページも見つからない場合は後述する交換手順に従って、現在取り付けられているベアリングを見てみましょう。ベアリング自体に品番が刻印されているはずです。
もしベアリングの刻印も見つからない場合にはベアリングの外径・内径・幅を測りましょう。同じ外径・内径・幅のベアリングを選択すればOKです。
余談:ベアリングの寸法と品番
ベアリングの品番は以下のルールで決められています。
例:6201
1桁目(6):ベアリングの種類・形状
2桁目(2):内径に対する外径の種別
3桁目~4桁目(01):内径の種別(01なら内径12mm)
5桁目以降(2RS):シールの種類(後述)
なお、1桁目の「6」は深溝玉軸受という種類のベアリングであることを表しています。
深溝玉軸受とは、今回のモーターでも使うような一般的なボールベアリングのことです。
寸法以外にも、ベアリングには以下のような4つのバリエーションがあります。
余談2:ベアリングのシールの種類と品番
ベアリングには寸法を表す4桁の数字の後に、シールの種類を示す記号が付与されています。
オープン形 あるいは 開放形
ボールが剥き出しの最もベーシックなベアリングです。
寸法を表す4桁の数字のあとに、何も記号が付与されていない場合にはこれを表します。
「オープン形」や「開放形」と呼ばれます。裏表のどちらからみてもボールが剥き出しです。
鋼板シールド形
剥き出しのボールを金属でフタをしたベアリングです。
片面だけがフタをされた「片側鋼板シールド形」と、両面がフタをされた「両側鋼板シールド形」が存在します。
寸法を表す4桁の数字のあとに、「Z」が付与される場合には「片側鋼板シールド形」、「ZZ」や「ZZE」が付与される場合には「両側鋼板シールド形」を表します。
「ZZ」や「ZZE」はメーカーによって付与する記号が変わります。
モーターによく使用されるタイプです。
この金属のフタは、グリス飛散防止が主な目的です。
そのためベアリングの回転を邪魔することはほぼなく、高速回転にも適しています。
外部からのゴミやホコリの侵入はある程度防ぎますが、小さなゴミやホコリ、水の侵入は防ぐことができません。
非接触ゴムシール形
剥き出しのボールをゴムでフタをしたベアリングです。
鋼板シールド形のゴム版と考えてもらって構いません。黒いゴムでフタをされています。片側がゴムでフタをされた「片側非接触ゴムシール形」と、両側がゴムでフタをされた「両側非接触ゴムシール形」が存在します。
寸法を表す4桁の数字のあとに、「LB」「V」「NKE」が付与される場合には「片側非接触ゴムシール形」、「2RZ」「LLB」「VV」「2NKE」が付与される場合には「両側非接触ゴムシール形」を表します。
記号が複数種類あるのはメーカーによる違いです。
鋼板シールド形同様、ゴムのフタはグリス飛散防止が主な目的です。
そのためベアリングの回転を邪魔することはほぼなく、高速回転にも適しています。
外部からのゴミやホコリの侵入はある程度防ぎますが、小さなゴミやホコリ、水の侵入は防ぐことができません。
ただし、鋼板シールド形より小さなゴミやホコリの侵入にやや強いです。
接触ゴムシール形
剥き出しのボールをゴムでフタをしたベアリングです。
非接触ゴムシール形とは違い赤のゴムでフタをされています。
寸法を表す4桁の数字のあとに、「LU」「NSE」が付与される場合には「片側接触ゴムシール形」、「2RS」「LLU」「DDU」「2NSE」が付与される場合には「両側接触ゴムシール形」を表します。
記号が複数種類あるのはメーカーによる違いです。
鋼板シールド形や非接触ゴムシール形とは違い、ゴミや水の侵入を防ぐためにゴムのフタがされています。
そのためベアリングの回転とゴムが触れ合っており、高速回転にやや不向きです。
一方でゴミやホコリ、水の侵入には強いです。
モーターの場合には、2番目に紹介した両側鋼板シールド形を使用します。
両側鋼板シールド形ベアリングには品番末尾にZZもしくはZZEというアルファベットが付与されています。
つまり、今回の場合には6202ZZおよび6201ZZを購入すれば良いということになります。
例えばAmazonで「ベアリング 6201」と検索してみると、以下の商品が一番に表示されます。
このベアリングはNTN製ですが、NTNのような有名メーカー製でも600円ほどで購入することができます。
6201や6202といったベアリングはよく使われるものですので、ホームセンターでもよく探すと見つかることが多いです。大抵、通販よりは安く手に入るはずです。
私は実際にこのNTN製のベアリングを使用して過去に一度ベアリング交換を行っています。
その時の記事:ベルトサンダーを自作したい その3 モーターのベアリング交換
今回は、モノタロウのオリジナルブランドである大阪魂のベアリングを選択してみました。型番は6201-2RSです。
モーター軸直結で使うならゴムシールの方がいいかも?
「ZZ」(両側鋼板シールド形)を選べと言ったのになんで「2RS」「LLU」(両側接触ゴムシール形)を選んでいるの?
と疑問に思われそうですが、これはあえてそうしています。
モーターをDIYで使用する場合、「モーター軸直結」で使われる方が多いのではないでしょうか?
▼これはモーター軸に木の棒を取り付け、サンドペーパーを貼り付けてドラムサンダーとして使用していた時の様子です。
本来、モーター軸にはプーリーを取り付け、ベルトを使って何かしらを駆動します。
しかし、DIYにおいては主に場所や手間の都合で「モーター軸直結」の使い方をする場合が多いです。ベルト駆動にすることでうまく場所を活用することが出来るケースもあるのですが、少なくとも私の場合はそううまくいかなかったため直結しています。
こうした使い方をすると、大量の木くずが舞います。
通常、モーターに使用される「ZZ」や「ZZE」は防塵性がやや低いです。大量の木くずがモーター周辺で発生するとベアリングに侵入してしまう訳です。
一方で接触ゴムシールの「2RS」や「LLU」は回転抵抗が強いものの防塵性に優れています。
そのため、モーターのごく至近距離で木くずが舞う私のケースでは、「ZZ」や「ZZE」より「2RS」や「LLU」が良いと判断したわけです。
本来モーター軸直結は、2つのベアリングで支えられたモーター軸に負荷をかけるため望ましくありません。
その対策をこちらの記事で紹介しています。
ベアリング交換手順
ベアリング交換はとても簡単です。
必要な道具は以下の通りです。
- プラスドライバー
- マイナスドライバー
- レンチ
- ギヤプーラー
モーターにより異なる可能性があります。
ボルトとプラスドライバーはモーターを分解するために使用し、外側から見えているボルトナットを外すために使用します。
▼こちらは私が実際に使用しているギヤプーラーです。
始めにモーターを分解します。
モーターを正面から見ると、4隅にナットが確認できます。
反対側はプラスネジ。
これをレンチで緩めます。
最初はレンチで緩めて、後はナットを指で押さえながらドライバーでクルクルと回すと良いでしょう。
こんな長いボルトがモーターの中を通っています。
次にモーターの前後のフタを開けていきます。
フタと本体の間には、よく見ると切り欠きがあります。
ここにマイナスドライバー等を入れて、ひねるようにフタをあけます。
フタが空きました。
早速ベアリングが見えています。
このような防塵カバーがはまっています。見ての通りベアリングはカバーの外側で、木くずが舞えば直接木くずを浴びてしまいます。
前後のフタをあけると、モーターの本体を抜き出すことができます。
前後にあるベアリングでモーター本体を支えています。
次にギヤプーラーでベアリングを抜き取りましょう。
見た目では何もわかりませんが、新旧比較です。
簡単に拭き取った後にも関わらず、木くずが付着しているのがわかると思います。
続いてベアリングを挿入します。
本来なら、ベアリングの内側の金属部分と同じくらいの径のパイプを用意して、ハンマーでたたき込みます。短い塩ビパイプ等がホームセンターで数百円で手に入ります。
しかし、私の場合には横着してハンマーでベアリングを出来るだけ水平を維持しつつ叩き込みました。オススメはしませんが、これでも可能です。
後ろ側も交換します。
防塵カバーを取り付けます。
この時、ボルトの通る穴とベアリングの切り欠きがしっかり合うようにしましょう。カバーは嵌っているだけですから、指でぐっと押し込んではめます。
最後にフタをして、ボルトナットを取り付ければ完成です。
元々大して劣化していなかったので効果はいまいちですが、スムースになりました。
取り外したベアリングはまだまだ現役です。
モーターのような高回転で使わない限りは劣化も気にならないレベルなので、別の用途で使う予定です。