【BMW】自然吸気4気筒エンジンの歴史
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BMWの歴史を紐解くと、BMWの前身となった3社のうちアイゼナハ社がフランスにあるドコービル社の2気筒エンジンを搭載するVoiturelleをライセンス生産していた1890年台まで遡ることが出来ます。
その後、大きな危機を乗り越えながらも現代に続くことになりますが、その起源と歴史は以下の記事で詳しく解説していますので、もし興味があればご覧ください。
ここでは、BMWジャパンが設立され、BMWが普及し始めた1980年台以降の自然吸気4気筒エンジンの歴史を解説します。
M10エンジン
1960年代から1980年代後半まで、小変更を重ねながら生産され続けたSOHC直列4気筒エンジンです。
鍛造クランクシャフト、バランスウェイトを備え、鋳鉄製ブロックとアルミニウム合金製ヘッドで構成されていました。また、このM10エンジンをベースとしてターボチャージャーを搭載したレース用エンジン(M12エンジン)も作られました。また、M3(E30)に搭載されたS14エンジンはM10エンジンのブロックをベースに作られました。
排気量は当初1.3Lで設計が進められていましたが、方針が変更され1.5Lエンジンとして登場しました。設計段階から同ブロックにおける2Lへの排気量拡大も考慮されており、後に排気量が2Lまで拡大していきます。
エンジンの型番はM1から始まり、M1の後に排気量を表す2桁を数字を付与するという規則に則って命名されており、1.5LのM10エンジンはM115という型番で表されました。後に現代でも使われる型番の後に排気量を表す数字を付与するM10B18(M10エンジンの1.8Lの意味)というような表記に変更されますが、命名規則が定まり切っておらず、変則的な型番も存在しました。
後継エンジンはM40エンジン。
派生エンジンはM12エンジンおよびS14エンジン。
M40エンジン
1987年から1995年まで製造されたM10エンジンの後継にあたるエンジンです。
先代のM10エンジンと比べると、カムシャフトがチェーン駆動からベルト駆動へ変更され、ラッシュアジャスターを備えています。ブロックとヘッドの素材は同じで、鋳鉄ブロックとアルミ合金ヘッドを採用しています。
バリエーションは1.6LのM40B16と、1.8LのM40B18です。
M40B16はボア径84mmストローク72mmの1596ccで、102馬力を発生し、3シリーズ(E30およびE36)に搭載されました。
M40B18はボア径84mmmストローク81mmの1796ccで、113馬力を発生し、3シリーズ(E30およびE36)と5シリーズ(E34)に搭載されました。
後継モデルとしてM43エンジンがあげられますが、M40エンジンのハイパフォーマンス版としてM42エンジンが存在しました。
後継エンジンはM43エンジン。
派生エンジンはM42エンジン。
M42エンジン
1989年から1996年まで製造された、M40エンジンのハイパフォーマンス版です。
M40エンジンとの大きな違いは、M40エンジンがSOHCであるのに対し、M42エンジンはDOHC化され、圧縮比が高められています。また、モデル末期にはDISA(可変吸気機構)も搭載されました。
このエンジンをベースにレーシングカー用エンジン(S42エンジン)が作られました。各部にアルミニウム素材を採用し、ステンレス製のエキゾーストマニホールドを採用するなどの軽量化がはかられています。
M42エンジンは特に大きな出力が求められる傾向にある北米向けに作られており、主に北米市場においてM40エンジンの代わりに採用されました。
バリエーションは1.8LのM42B18のみとなり、ボア径84mmストローク81mmの1796ccで、138馬力を発生し、3シリーズ(E30およびE36)と初期のZ3に搭載されました。3シリーズ(E30およびE36)のうち、318iS(318iにエンジン周りのメカニカルチューンなどを施してスポーティに仕上げたモデル)においては北米市場以外でもこのM42エンジンが採用されています。
後継エンジンはM44エンジン。
派生エンジンはS42エンジン。
M43エンジン
1991年から2002年まで製造されたM40エンジンの後継にあたるエンジンです。
先代のM40エンジンと比べるとM42エンジンで採用されたDISA(可変吸気機構)が搭載され、幅広い回転数で高いトルクを発生させることに成功しています。また、カムシャフトはベルト駆動からチェーン駆動へ戻されました。日本には導入されませんでしたが、天然ガスモデルも存在し、3シリーズ(E36)および5シリーズ(E34)に採用されました。
バリエーションは1.6LのM43B16と、1.8LのM43B18、更に1.9LのM43B19です。
M43B16は105馬力を発生し、3シリーズ(E36およびE46)に搭載されました。
M43B18は115馬力を発生し、3シリーズ(E36)と5シリーズ(E34)、Z3に搭載されました。
M43B19は118馬力を発生し、3シリーズ(E46)およびZ3に搭載されました。M43エンジンはDISAが標準で搭載されていますが、M43B19エンジンにはDISAを搭載しないバリエーションも存在し、そちらは105馬力を発生し3シリーズ(E36およびE46)に搭載されました。
多くの電子制御を備えない最後のSOHCエンジンであり、このM43エンジンまではDIYで整備を楽しむユーザーにとってもとても手を加えやすいエンジンであったといえます。
後継エンジンはN40エンジンおよびN42エンジン。
派生エンジンはM44エンジン。
M44エンジン
1996年から2001年まで製造されたM42エンジンの後継でありM43エンジンのハイパフォーマンス版にあたるエンジンです。
M43エンジンとの違いはDOHC化されている点で、先代のM42エンジンと比べると排気量が1796ccから1895ccまで拡大された他小変更が加えられ、最高出力は変わらないもののトルクが向上しています。
バリエーションは1.9LのM44B19のみとなり、ボア径85mmストローク83.5mmの1895ccで、138馬力を発生し、3シリーズ(E36)およびZ3に搭載されました。
後継エンジンはN42エンジン。
N40エンジン
2001年から2004年まで製造されたM43エンジンのうち1.6Lモデルの後継にあたるエンジンです。日本で販売された車両には搭載されておらず、いくつかの排気量による高い税率を課している国に向けて生産されました。
先代のM43エンジンと比べると、DOHC化されVANOS(可変バルブタイミング機構)が搭載され、鋳鉄製だったエンジンブロックがアルミニウム化されました。
バリエーションは1.6LのN40B16のみで、ボア径84mmストローク72mmの1596ccで114馬力を発生し、3シリーズ(E46)に搭載されました。
BMWの主力4気筒エンジンはN42エンジンであり、これをベースにショートストローク化して排気量を抑え、バルブトロニック(吸気バルブの無段階調整機構)を省略したエンジンといえます。
後継エンジンはN45エンジン。
N42エンジン
2001年から2004年まで製造されたM43エンジンの後継にあたるエンジンです。
先代のM43に比べると、DOHC化されVANOS(可変バルブタイミング機構)およびバルブトロニック(吸気バルブの無段階調整機構)が搭載され、鋳鉄製だったエンジンブロックがアルミニウム化されました。
バリエーションは1.8LのN42B18と、2LのN42B20です。
N42B18は116馬力を発生し、3シリーズ(E46)に搭載されました。
N42B20は143馬力を発生し、同じく3シリーズ(E46)に搭載されました。
M43エンジンから急激に進化・近代化したエンジンと呼べます。6気筒モデルを上回るスムースさと静粛性を手に入れ、環境性能・出力共に向上した優れたエンジンであったためエンジンオブジイヤーにも選出されました。しかし、タイミングチェーンガイドの破損やオイル上がり・オイル下がりによるオイル消費(排気ガスが白くなる)、いくつかのオイル漏れなど問題点も多いエンジンでした。
後継エンジンはN46エンジン。
N45エンジン
2004年から2011年まで製造されたN40エンジンの後継にあたるエンジンです。
先代のN40エンジンに比べると、クランクシャフトやバルブ機構、インテークマニホールド形状の改良など小変更が加えられました。
バリエーションは1.6のN45B16と、2LのN45B20です。
N45B16は114馬力を発生し、1シリーズ(E81およびE87)と3シリーズ(E90およびE91)に搭載されました。
N45B20は174馬力を発生し、3シリーズ(E90)に搭載されました。
N45B20が搭載された320siはツーリングカーレースのホモロゲーションモデルとして販売されました。N45エンジンはN46エンジンの排気量と一部機能を省略版と言う位置づけですが、VANOS(可変バルブタイミング機構)を備えないN45の方が高い回転数が求められるレーシングカー用エンジンのベースとしては適当でした。
N46エンジン(N46Nエンジン)
2004年から2015年まで製造されたN42エンジンの後継にあたるエンジンです。
先代のN42に比べると、クランクシャフトやバルブ機構、インテークマニホールド形状の改良など小変更が加えられました。モデル末期には更に小変更を施したN46Nと型番を改めました。
バリエーションは1.8LのN46B18と、2LのN46B20です。
N46B18は116馬力を発生し、3シリーズ(E46)に搭載されました。
N46B20は更に5つのバリエーションが存在します。
N46B20U1は129馬力を発生し、1シリーズ(E87)と3シリーズ(E90およびE91)に搭載されました。
N46B20U2は136馬力を発生し、1シリーズ(E87およびE81)と3シリーズ(E90)に搭載されました。これは特にガソリンに硫黄分が多く含まれる国向けに販売されました。
N46B20Aは141馬力を発生し、3シリーズ(E46)に搭載されました。
N46B20O1は148馬力を発生し、1シリーズ(E87)、3シリーズ(E90およびE91)、X3(E83)およびZ4(E85)に搭載されました。
N46NB20はN46エンジンの最終バージョンで154馬力を発生し、1シリーズ(E81、E82、E87およびE88)、3シリーズ(E90、E91、E92およびE93)、5シリーズ(E60)、X1(E84)およびX3(E83)に搭載されました。
一部の国ではN43エンジンという後継エンジンが存在しますが、日本を含む多くの国ではこのN46エンジンがBMWの自然吸気4気筒エンジンの最後のモデルとなりました。
S42エンジン
S42エンジンは市販車には採用されていないレーシングエンジンです。
3シリーズセダンをベースとしたツーリングカーレース用にM42エンジンをチューンナップしたエンジンとなっています。スロットルボディが1気筒あたり1つ搭載され、1999ccまで排気量が拡大されています。また、インジェクターはM42エンジンが1気筒あたり1つであったのに対し、S42エンジンでは1気筒あたり2つの合計8つに変更され、圧縮比が引き上げられています。オイルはドライサンプ化され、インテークマニホールドやシリンダーヘッドをカーボンファイバー製に置き換えることで軽量化もはかられています。
最高出力は300馬力で、後に308馬力、315馬力と出力が向上しています。
S14エンジン
M3(E30)に搭載されたエンジンで、M10エンジンのブロックとM88エンジンのヘッド(M88エンジンは6気筒なので4気筒分を除去した)を使用して作られたエンジンです。M88はレーシングカー(M1)に搭載されたエンジンで、歴代のM3のなかで唯一E30のみがレーシングカーの血を色濃く受け継いだM3と言えます。
排気量は2.3L(2303cc)で、最高出力は200馬力。その後発売された限定モデルでは220馬力へ出力を向上させ、更に排気量を2467ccに拡大したエンジンでは238馬力を発生させました。
1代限りのエンジンであり、明確な後継エンジンはなく、派生エンジンもありません。
S14エンジンを搭載したM3は近代のBMWにおいては唯一プレミアがついており、非常に高額で取引されています。