「静かなDIY」と題して長らくDIYの騒音と戦っていますが、その中でも有効だった対策3つを紹介します。
私は長らく賃貸で暮らしており、一方でDIY(特に木工)が好きでしたので騒音を出さないDIY・DIYの騒音対策に長らく苦心してきました。
幸か不幸か私は音に敏感な方で、日常生活の足音すら気にしてしまう小さな人間です。
そのためDIYの騒音に対しても普通の人に比べてかなりハードルを高く設定しています。
最終的には自作の防音室を製作することでほとんどの騒音を封じ込めることに成功しましたが、そこまでに試行錯誤してきた様々な対策のなかから特に有効だった3つの対策とポイントを解説します。
単純に防音材などのグッズだけでなく、道具の扱いや工具の選択にも触れています。
>>>自作防音室の記事はこちら
タイトルにある通り「床」「振動」「過負荷」の3点が最も大きなポイントとなります。
第3位 「振動」を抑える工具選び
自作防音室の製作記のなかでも触れていますが、防音室を作るにあたって「防音」に関する知識を可能な限り学習しました。
その中ではっきりとわかったことは、騒音には種類があり、それぞれ対策の優先度や対策の手法が異なることです。
音はモスキート音と呼ばれる「キーン」という高い音から、ほとんど振動と言っても過言でないような低い音まで幅広いです。
その中でも高い音は意外と対策が簡単かつ対策が必要ないケースも多いです。
一方で低い音は対策が難しくどのような環境でも対策の優先度は高くなります。
詳しく解説します。
高い音は防音材(遮音材や吸音材)による低減が非常に有効に働きます。
そのため適切に遮音材や吸音材を取り付けるだけで、簡単に音を外に漏れないように対策することができます。
また、室内での音の反響についても吸音材を使って簡単に抑えることができます。
逆に言ってしまえば、最近の賃貸を含めた住宅であればそのほとんどがシャットアウトされるわけです。
最近の賃貸住宅は遮音性も格段に上がっています。
多くの賃貸住宅に住んできた私の感覚で言えば、築15年以内の木造以外の賃貸住宅であれば、隣室や上階、階下の掃除機の音が聞こえることはありません。
掃除機の音は典型的な高い音です。
この高い音に属するのが丸ノコなどの切断工具の切断音や集塵機のファン音、ルーターやトリマーなど多くの高回転型モーターを搭載した工具の空転音です。
一方で低い音は防音材による低減が難しいです。
低い音や振動の低減には壁や床の比重が関係しており、逆に吸音材の効果はほとんどありません。
一般的に低い音や振動へ最も有効な対策はコンクリートです。
床も壁も天井も分厚いコンクリートで覆うことで低い音や振動が低減できます。
しかし、これはあまりにも非現実的です。
一般家庭で実現することは難しいでしょう。
そこで使用されるのが遮音材やそれに類するものです。
一般的には石膏ボードや合板、ガラス板など「そこそこ重い板状のもの」が採用されます。
これは一般的な住宅にも使用される建材ではありますが、騒音を完全に抑えきるほどの量が使用されていないのが現実です。
これに対する最も簡単で有効な対策は「第1位」に任せるとして、ここで勧めたい対策は「低い音や振動自体を発生させない」ということです。
繰り返しになりますが低い音や振動はいくら対策をしようと、それこそ全面コンクリート張りでもしない限り抑えることができません。
そのため騒音を気にするのであれば低い音や振動自体がそもそもNGということになります。
工具を取捨選択することで振動を発生させないDIYが可能です。
それぞれ代替手段がありますので参考にしてみてください。
振動の多い工具 | 代替手段 |
---|---|
オービタルサンダー |
ベルトサンダー |
ジグソー |
丸ノコ バンドソー |
ランダムサンダー | ベルトサンダー |
インパクトドライバー | ドリルドライバー |
トンカチ | クランプ |
このように、身近な工具であっても振動を発生させる工具は数多く存在します。
それらを適切に避けることで周辺への音漏れを抑えたDIYが可能になります。
振動を抑えたDIYでは大抵の場合代替手段がありますが、唯一代替手段がないのが「たたく」作業です。
ノミで溝を彫る、木組みを嵌め込む、釘を打つといった作業が代表的です。
ノミはドリルで穴あけして良く研いだノミを使って押して切る。
木組は緩めに作るかクランプで嵌め込む。
釘は使わないといった割り切りや別角度のアプローチが必要になります。
また、適切な道具を使っていても使い方次第では大きな振動を発生させてしまいます。
その主な原因は貧弱な作業台にあります。
折角木材を作業台において、振動の出ない工具で作業をしても、木材や作業台自体がガタガタグラグラしては振動を増幅させてしまいます。
DIYを始める際には第一歩として重くて強固な作業台を製作することをオススメします。
▼ベルトサンダーの例
第2位 「過負荷」を抑える道具の扱い
第3位の振動を発生しない代替手段として丸ノコやベルトサンダー、ドリルドライバーなどを推奨しました。
しかし、これらの工具が発する高音も度を越せば周囲に騒音をまき散らすことになります。
丸ノコに関しては回転数を抑えた「サイレントモード付」のモデルが登場していますが、丸ノコ以外ではそういった商品は少ないのが現状です。
それに加えて、丸ノコであってもその他のベルトサンダーやドリルドライバー(穴あけやネジ打ち)も負荷がかかると騒音が顕著に上がる傾向があります。
基本的に電動工具はすべてモーターの回転を利用しています。
そのためどんな工具であっても負荷がかかると騒音が大きくなります。
そこで、負荷を上げないような道具の使い方を覚えることで、今使っている道具を買い替える必要もなく騒音を抑えることが可能になります。
工具の種類 | 騒音が大きくなる使い方 | 静かな使い方 |
---|---|---|
切断工具 |
木材に対して強く押し付ける 木材を早く送り出す |
木材に優しく押し当てて力を入れずに切り進める 刃は定期的に交換して新品にする |
研磨工具 | 早くたくさん削ろうと木材に強く押し付ける |
木材に押し付ける力はかけず、工具の自重だけを使って削る 適切な番手のサンドペーパーを使用する |
集塵・掃除機 | 使いっぱなし | フィルターやタンクを定期的に清掃する |
穴あけ | 鈍ったビットを使用する |
よく切れるビットを使う ビットを研ぎなおす |
このように工具に負荷を与えない道具の使い方や適切なメンテナンスを施すことで、騒音を無暗に大きくさせずに作業を進めることが可能になります。
▼サイレントモード付の丸ノコの例
第1位 「床」を覆う極厚マット
最後に最も効果的な対策として床を覆う極厚マットを紹介します。
第3位でも解説した通り、周囲へ伝搬しやすい音は低い音や振動です。
低い音や振動は、多くの場合床を伝搬して周囲へ漏れ出します。
そこで、あらゆる対策の中で床の対策が最も重要になります。
(本当はコンクリートを流してしまうのが最も有効なのですが、それは現実的ではないため石膏ボードを敷き詰めるとなお高い効果を得ることができます。)
さて、騒音を防ぐためや床の傷を防ぐために床にマットを敷いている方もおられると思います。
その厚みは5mmでしょうか?10mmでしょうか?
最近では足音を階下に伝えないことを主目的として40mmという超極厚のジョイントマットが販売されています。
これを床に敷き詰めることで、低い音や振動の伝搬を劇的に抑えることができます。
もちろん床の傷を防いだり、作業中の木材や工具の落下の予防にもなります。
また、先述の通りこの下に石膏ボードを敷くとなお効果が高まります。
石膏ボードは非常に安価であり、6畳程度の部屋であれば2,3千円で覆いつくすことができます。
静かにDIYをしたい場合には、何はともあれ市販されるなかで最も厚いマットを床に敷き詰めることが第一歩と考えた方が良いでしょう。