ドリリウム

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なぜ高知の移住促進が滑り倒しているのか?

高知市への地方移住促進のため、YouTubeの高知市公式アカウントがPR動画を公開しています。

概要は以下のテレビ高知のニュースサイト上から確認することができます。

www.kutv.co.jp

高知市で移住体験をしている青年が、よさこいなどを通して高知市の魅力を発見していくというドラマ仕立ての動画で(後略)

同サイトより抜粋

これは典型的なマーケティング活動における失敗例です。

実際に動画を見ると、大きな構成要素のひとつに「よさこい」が取り入れられています。

 

おそらく発案者や協議に参加したメンバーは以下のように考えたのでしょう。

  1. 高知で知名度があるモノ・コトと言えば「よさこい」だろう
  2. 移住促進には「よさこい」を取り入れると良いだろう
  3. 「よさこい」以外にこれといった知名度とインパクトがあるモノ・コトはない

周りとしても、その案が良いか悪いかは別として明確に否定する理由はないと考えたはずです。

無難、あえて反論する余地はない、悪い案ではない。

こうした意見は往々にして大きな組織のなかで批判されたり、反対される可能性が低いものです。

だから組織の一員としては、批判される心配がないこうした無難な意見を積極的に採用するし、決定権を持つ中間管理職もさらに上からの反対の心配のない無難な意見を好むようになります。

 

しかし、本当にこれが移住促進につながるのでしょうか?

ほんとうに「無難」なのでしょうか?

 

①高知で知名度があるモノ・コトと言えば「よさこい」だろう

②移住促進には「よさこい」を取り入れると良いだろう

①と②のつながりを正しく説明することはできるでしょうか?

そもそもの起点でなる①の時点で、高知市側の独りよがりな意見になってはいないでしょうか?

なぜ、知名度があるモノ・コトを取り入れることで移住促進につながるのでしょうか?

移住を検討している人が求めるものと、PRする側が発信したいことは必ずしも一致しません。今回のケースで言えば、高知市が伝えたいと思う魅力を発信する前によく考える必要があるのです。

漫然と漠然とPRするのではなく「移住促進」という目標があるのであれば、移住を検討している人が求める点を訴求しなければなりません。

 

これを確かめるには記事中の以下の点が参考になります。

高知市によりますと県外から移住する人は年々増加していて、2020年度は7年前と比べておよそ5.7倍に。県内への移住者の、およそ3割が高知市に移住しています。コロナ禍でリモートワークなどが進み地方への移住志向が高まったことが背景として考えられますが(後略)

同サイトより抜粋

ここでわかることは以下の2点です。

  • このPR動画を用意する前から移住者は上昇傾向にある
  • 主な理由はコロナ禍によるリモートワーク増加

次に、数字のマジックに気をつけなければならないのが「7年前と比べて5.7倍」という点です。

これは元々少なかった移住者数を割合で表すことであたかも劇的に増加しているように見せかけています。(そのように捉えられてもおかしくない)

さらに比較対象は驚きの7年前です。

また、最も重要な移住者増加の根拠すら「リモートワークなどが進み地方への移住志向が高まったことが背景として考えられますが」と曖昧です。

 

そもそも、既に移住者が増加したという最大の実績と根拠があるにもかかわらず、それを十分に調査・検証せずに次の一手を打つ時点でダメです。

 

おそらく今回のPR活動、あるいはこれまでの活動においてもまともなマーケティング能力がある人材が関与していないのでしょう。

高知市、ひいては高知県は商業、産業などあらゆる点で全国でも下から数えた方が早い地域です。

これは残念なことに、マーケティングをはじめとして優秀な人材が相対的に少ないことを表しています。

つまり高知市が本当に移住促進をはかりたいのであれば、まずは同じ組織内の人材でも、外部の人材でも良いから優秀なマーケターを雇い、決定権や影響力のある立場にある人間の直属として独自の立ち位置と裁量を与えて活動させる必要があるでしょう。

よさこいと移住者増加

さて、話を戻してよさこいと移住を志向する方の関係を考えてみましょう。

かくいう私自身が、高知県へ移住した移住者です。

高知市(高知県?)が都内で行う相談会などのイベントも、当時はコロナ前ということで参加した記憶があります。

こうしたイベントでは、高知の魅力については全国どこでも手に入るような既存のパンフレットを配るのみで、これといって熱意やリソースを割いてPRしている印象はありませんでした。

 

PRをする側からすれば魅力を発信したいのかもしれませんが、特定の地域へ移住を検討する段階の人は既にたくさんの都道府県・市町村を調べ上げて候補を絞った上で検討を進めています。

ここがPR側と検討側の一番のすれ違いポイントでしょう。

 

だからこそ、就業支援に力を入れるのは妥当です。100点中50点を挙げられる妥当な選択です。

移住は旅行とは違います。

綺麗な景色や観光スポット、美味しい特産品を紹介されたとして、それが移住を決定づけるものにはなりません。(もし旅行感覚で移住を決める人がいたとしても、そうした人は最終的に高知が期待する納税や定住、人口拡大に寄与しない可能性が高いでしょう)

 

私がいくつかのイベントに参加して感じたのは、とにかく就業支援に力を入れているな、ということです。

大抵の人は働かなくては生きていけません。

だから移住するなら働き口が必要です。

しかし、私の経験からいえばここで紹介される仕事は碌なものがありません。

元々、全国屈指の低所得県である高知において人手不足=魅力がないに陥っている企業が募集しているわけですから、ここで見つかる求人はどうしても中の下以下となってしまうわけです。

 

最近ではすっかりとリモートワークも定着して、能力がある人はリモートワークで勝手に仕事を見つけてくるでしょう。

特に移住を検討している人は、しっかりとキャリアパスや自己学習を通じて、地方移住をしても問題なく仕事が見つかる準備をしています。

職種によってはリモートワークが難しいケースもありますが、そうした専門的な職種も仕事に困ることは少ないでしょう。

 

問題となるのは、全く準備もなく専門知識や経験もない人への就業支援です。それが受け入れ側にとって利益になるかどうかは置いておいて、そこで求められるのが先程述べた「中の下以下の求人」です。

 

さてさて、再三にわたり話が逸れてしまったようですが「よさこい」とのつながりを考えなければなりません。

  1. 移住したい!と思う
  2. 希望に沿う暮らしができる移住先を探す
  3. 移住先が発信する移住促進制度を確認する
  4. 移住先を決定する
  5. 移住する

ざっくりと移住者が移住を決める際の流れを5つのステップに分けてみました。

 

まずは2番目のステップで全国の市町村の中からふるいにかけられ、移住先候補に残る必要があります。1番目のステップに働きかけるのは更に難しくなるのでここでは一旦おいておきましょう。

この対策は非常に難しく、移住促進と銘打った上辺だけの対策は無意味になることが多いです。

なぜなら移住者が移住先に求めるものは千差万別であり、受け入れ側としてはただただ漫然と地元の良いと思われるところを発信するしかないからです。

(もしくは移住者に他の追随を許さないほどの大きなサポートを提供している場合は別ですが、そこまで潤沢な予算があれば、そもそも何もしなくても人が集まるでしょう)

 

この2番目のステップへの対策として最も妥当と言えるのが特別な施策をしないことです。

移住促進と銘打ってPRをしたとしましょう。

おそらくポータルとなるWebサイトがあって、様々な情報が発信されることでしょう。

果たして移住者はこのポータルの情報だけを見て判断するのでしょうか?

おそらく関連する情報を検索したり、実際に地元の人が発信するブログなどで生の声を確認したり、地元企業のWebサイトで活況具合を確認するかもしれません。

大抵の場合、移住促進PR用のポータルサイトに掲載される情報は、いくつかの観光名所や特産品など既存のものの寄せ集めです。

つまり、そのポータルサイトにしかない情報は少なく、インターネット全盛の今はその情報を多角的に精査することが誰にも容易に出来てしまいます。

逆に言えば、ポータルサイトなどなくても意欲があればすべて調べて知ることができるのです。

だからこそ、そうした上っ面な対策を施すよりは、観光地や特産品により一層磨きをかけるためにコツコツとお金を使い、それぞれに地道な改良を施していくことで地域の魅力を底上げすることに予算を割くことこそが妥当な策であるというわけです。

 

多くの場合、移住者を募集するような地域はいわゆる「田舎」です。

どんぐりの背比べのような「美しい自然」をPRしますが、結局のところそのクオリティはデザイナーと写真家の腕ひとつ。更に言えば、かける予算ひとつで決まってしまいます。

本当にごくごく一部の限られた自然の生み出す奇跡のような地形や光景を除けば、大抵の自然はどこも似たり寄ったりです。

そんな中で行くも不便、着いても不便な碌な施設が揃っていない山奥の秘境のようなところを魅力を発信しても、なんの意味もありません。

高知が僻地で山と海ばかりのド田舎であることは、言われずともわかっています。

 

そんな高知においてそれなりに全国的知名度を有するイベントこそ「よさこい」です。

実際には大して見るべきところもないイベントで、参加して楽しむ側が主体となるイベントです。

参加者は全国から集まりますが、所詮は年に1回の行事であり移住の理由としては弱いでしょう。

見る側としても、人口密度の低さや自然の豊かさを求めて地方移住を決める人が多いと仮定すれば、無駄に人が集まる見所の無いイベントに好意的ではない人すらいるかもしれません。

ここでも長々と講釈を垂れることはできますが、結論を言えばよさこいで移住促進は無意味です。

揚げ足取り

ということで、高知の移住促進対策についてあれこれと指摘しましたが、結局のところこれは揚げ足取りです。

よさこいで移住促進は無意味ですが、今回高知市が制作した動画の本質は「よさこいで移住者の関心を惹こう」なんていう安易なものではないからです。

詳しくは実際に動画を見てもらいたいのですが、よさこいは構成要素の一部であり、主題を補強する要素でしかありません。

 

実際にこの動画を見ると、出来の悪さに共感性羞恥を覚えてします人もいるかもしれませんが、まともなマーケターもいない状況では致し方ない部分でしょう。

youtube.com

ブログを書いている人

カタミチ

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