木工を中心としたDIYを始めるとどうしても欲しくなるのが「集塵機」です。
市販の掃除機や専用品の集塵機など選択肢は幅広いですが、特に木くずや粉塵を吸い込み始めると、すぐに詰まることが問題になります。
そこで有効なのが「サイクロンセパレーター」いわゆる「遠心分離機」です。
現在では手持ちの掃除機や集塵機を接続して簡単にサイクロン集塵機を製作できる以下のような製品がたくさん出回っています。
サイクロン機構の例 |
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安価に「サイクロン集塵機」を自作できる一方で、いくつかの注意点を守らなければ「吸引力」が劇的に低下してしまうことを知っておきましょう。
吸引力を低下させる要因①「サイクロン」
「サイクロン」はダイソンなどのCMのイメージから強い吸引力があると勘違いしている方も多いです。
しかし、実際にはサイクロンセパレーターは非常に抵抗の大きい仕組みで、吸引力を劇的に低下させます。
「え?」と思われそうですが事実です。
実際に先ほど紹介したようなサイクロンセパレーターを使ってサイクロン集塵機を自作された方は、パーツを着脱して吸う力を比べてみてください。
手を当てただけで吸い込む力が全く違うことがわかるはずです。
とはいえ、ごみを分離するためにサイクロンセパレーターは外せません。
吸引力の低下は諦めて使うことになるわけですが、ここで問題になるのが「サイクロン集塵機」を自作するときに使った「掃除機」や「集塵機」です。
もしその「掃除機」もしくは「集塵機」がもともとサイクロンセパレーターを備えたものだった場合、サイクロン機構が2段階で入ることになります。
1つでも吸引力を劇的に低下させるサイクロン機構が2つです。
特に市販の掃除機を使って「自作サイクロン集塵機」を作られた方を調べてみると、この2段階のサイクロンセパレーターを気付かずに実装してしまっているケースが多いです。
かくいう私も過去にそのような失敗をしています。
>>>木くずの掃除を楽にするサイクロン集塵機を作ろう(ツインバード スティック型掃除機と組み合わせる) - ドリリウム
そもそも掃除機や集塵機のうちの「吸う部分」すなわち「モーターとファン」は全体からすると非常に小さなパーツです。
「サイクロン集塵機」全体の小型化のためにも、掃除機側のサイクロンセパレーターは取り外してしまうのが良いでしょう。
私が実際に掃除機側のサイクロンセパレーターを撤去した記事がこちらです。
問題としては、それなりの加工が必要になるという点です。
吸引力を低下させる要因②「蛇腹ホース」
集塵機に欠かせない部品が蛇腹ホースです。
集塵機用の内径が大きく内側が平たんなものは高額な傾向があり、よく自作した方が使われているのが洗濯機用の排水ホースです。
排水ホースの例 |
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非常に安価で内径は30mmほどと、一般的な電動工具との接続性は悪くありません。
しかし、これもまた吸引力を劇的に低下させます。
その要因は2つあります。
内径が小さいこと
一点目は内径が小さいことです。
汎用品や流用可能なホースを探すと、大抵30mm前後が上限となります。
しかし、一般的に木くずや粉塵を吸う際に使われるホースはDIY用であっても内径50mm~100mmほどとかなり大きいです。
これは木くずや粉塵を詰まることなく運ぶためであり、抵抗を減らすためであり、吸引力を無駄にしないためでもあります。
内径30mmほどのホースを使うと、吸引力の低下以上に木くずが途中で詰まることを不満に感じるはずです。
また、後述する通りホースが細ければ吸引力は上がりますが、一方で抵抗が増えて効率が悪くなります。
内側が蛇腹状であること
二点目は内側が蛇腹状であることです。
集塵専用のホースを見てみると、外側は蛇腹状ですが内側が平坦になっていることに気が付くはずです。
例えば以下の製品がわかりやすいです。
集塵ホースの例 |
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内側が平坦になることで、途中で木くず等が詰まることを避けるだけでなく抵抗が大きく減ります。
つまり、吸引力が削がれません。
逆に言えば、内側も蛇腹状になったホースを使うと吸引力がこれまた劇的に低下します。
サイクロン機構と同様に、差を実感できるほどの大きな変化になります。
吸引力を低下させる要因③「ホースの長さと直径」
集塵機や掃除機、ブロアーなど規模の大小を問わず仕組みは非常に簡単です。
モーターとファンがついているだけの、いわば吸うことに特化した扇風機のようなものです。
事業用の大きな集塵機であっても、家庭用のスティック掃除機であっても、その構造は基本的に変わらず扇風機のようなものなのです。
つまり、空気を吸って吐き出しています。
この時モーターの回転数とファンの設計などによって空気を吸排する量が決まります。
この空気の量に見合ったホースの長さや直径を選択しなくては、吸引力が弱すぎたり詰まりがちになってしまいます。
ポイントは空気の量と速さです。
わざわざ実験をしなくとも、太いホースより細いホースを使った方が吸う力が強いことは容易に想像がつくと思います。
これと同じことがホースの長さにも言えます。
イメージがつきにくいかもしれませんが、ホースが長ければ長いほど吸う力は落ちてしまいます。
ホース内の抵抗もありますが、ホース内の空気の量が増えるためにこのようなことが起こります。
現実問題としてホースの長さが問題になることはほとんどありません。
なぜなら大きな作業場では設備の数も増え、おのずと使用される集塵機もそれに見合った大きさになるからです。
特にDIYにおいて問題となってくるのはホースの直径ということになります。
先ほど紹介したような市販されているサイクロンセパレーターはその小ぶりなサイズ感とは違って結構大きな集塵機に適合するように作られています。
ホースの径は50mmクラスのものが多いようです。
しかし、家庭用の掃除機や小型の集塵機で50mmのホースを使ってしまうと吸引力が落ちてしまい、結果的に木くず等が詰まりやすくなってしまいます。
高いけど高性能で長く使える専用品を使おう
サイクロン集塵機を自作する際に気を付けたいポイントを紹介しました。
2段階の無駄なサイクロン機構を撤去すること、そして一番大きいのが集塵専用のホースと使うという点です。
排水ホースは排水に適しているものの集塵には不向きです。
また、耐久性も高いとは言えず、先のとがった木くずなどのせいで簡単に穴が開くこともあります。
途中で詰まる木くずが出たり、吸う力がすぐに落ちたり。
そんな日々の不満や吸引力の低下を抑えるためにも、少しだけ高いですが集塵専用のホースを使うことをオススメします。
ポイントは内径が太いことと内側が平坦なことです。
目安としては内径は最低でも38mmあると良いでしょう。
ただし、木くずや粉塵の少ないライトユースに関して言えば不適当なホースを使おうが、太すぎるホースを使おうが問題なく集塵が行えてしまうという事実もあります。
不満が出てからこの記事を参考に対策を講じてみるのも良いのではないでしょうか。
ちなみに38mmは一般的な集塵機構に使われるホース径のなかで最小クラスとなります。
Amazonなどで手軽に切り売りされているこういったホースがオススメです。