2019年5月9日加筆修正
賃貸(アパート・マンション)における木工や家具つくりといったDIYのための防音室を作りたいと思います。
自作防音室に関する情報は数あれど、その多くは音楽用です。
今回はDIYなどの作業用に特化した防音室を製作したいと思います。
また、据え置き型の防音室製作は簡単ですが、今回は賃貸向けということで引っ越しも視野に入れます。
分解・組立が容易であること、そして運搬性、収納時の収まりの良さなども重要なポイントです。
ポイントは以下の3点です。
- 階下への防振性・防音性に優れる
- 軽量で運搬しやすい部品に分割可能
- 分解した状態でコンパクトにまとめられる
あえて入れませんが、もちろん安く!目標は5万円以下です。
こちらの続き。
前回:【DIY用自作防音室#7】分解・運搬OK!賃貸DIYに特化した防音室を作りたい(製作/中編)
前々回:【DIY用自作防音室#6】分解・運搬OK!賃貸DIYに特化した防音室を作りたい(製作/前編)
前回のおさらい
前回は、部品同士の合わせ面のバリ取りや
剥き出しの合板では見栄えが悪かろうと壁紙を張りました。
また、室内側に一部吸音パネルを貼り付けました。
そして最後に、自作防音室の換気扇の定番である「ロスナイ」を取り付けました。
組立
ここまではすべて準備工程でした、ようやく部品がすべて整い、組み立てを始めます。
こちらが前回作っておいた、部品同士を連結する金具の代わりの部品です。
いらなくなったクルミを使った棚の棚板をカットして制作しました。壁紙の白い色に馴染ませるため、また防虫のために白いオイルを薄っすら塗布しています。見ての通り仕上げが荒いのですが、これは防音室が完成してからこのパーツを綺麗な楕円形に仕上げ直す予定だからです。
まずは、部品と部品の合わせ面に穴を空けます。マスキングテープを貼ってからドリルで穴あけすると、周りが毟れたりせずに穴を空けることができます。
真っすぐ穴を空けるために、SK11のドリルガイドを購入してみました。
商品自体は良いのですが、M8の鬼目ナットの下穴は11mmちょいと半端なサイズです。11mmで穴あけをしましたが、こちらのドリルガイドキットには11mm用のガイドが付属しません。1mm大きい12mmを使って「大体垂直」にしてみました。
ここに鬼目ナットを埋め込みます。少量のボンドを鬼目ナット側に塗布してゆっくり回すのがコツだと思います。
鬼目ナットは60個1箱を購入しました。
M8はやりすぎたかもしれません。M8になると鬼目ナットもボルトも高いですが、その分頑丈に仕上がります。
当初、例えM8ボルトを使ったところで強固に固定することはできないだろうと考えていました。
しかし、M8を選んだお陰か、これだけでもかなりガッチリしています。
本来であればこのパーツで軽く固定しておいて、最終的に防音室と言う「箱」を作ることで強度を出すつもりでした。しかし、このボルト固定だけでも寄りかかることができる程度の強度と剛性が出ています。嬉しい誤算です。
この調子ですべて組み立てていきますが、木材同士の合わせ面にはどうしても歪みがでます。つまり、隙間ができます。
大きなゆがみはカンナで修正してから組み立てましたが、全くぴったりと合わせることはできませんので、木同士の合わせ面にはくまなくエプトシーラーを貼り付けています。30m分必要でした。
さて、ここまではパーツが横並びになる場合に固定方法です。
▼こんな感じ。固定カ所は下2中3。
しかし、このようにパーツが縦横に並ぶ場合には直接ボルトで固定していきます。
同じようにM8の鬼目ナットを埋め込み、M8の60mmボルトで固定します。ワッシャーには木用の広いもの(26mm)を使用しています。
天井も同じ要領で固定します。
これが途中の室内。左手の金具はロスナイの取り付け金具です。取り付け金具を固定するために、針葉樹合板を貼り付けています。
ロスナイを取り付けてみました。エアコンと同じように引っ掛けてネジ1本で固定するだけです。
最後に扉です。
当初は側面の壁全体を開け閉めさせようとしていました。
▼この青い部分全体がガバリと開くわけです。
これには理由があります。
1点目は、扉だけ別パーツにすることで隙間が増えることと。
2点目は、ただでさえ分解・運搬性を考えてパーツを小分けしている=防音性を犠牲にしているのに、更にパーツを小分けしたくなかったからです。
しかし、実際に組み上げてみると側面全体を扉にする必要がないと感じました。
出入りする時に少しかがめば、側面下部だけ開閉すれば十分だと気が付いたのです。
もちろん下だけでは不便!となれば、後から丁番を追加すれば容易に修正可能です。
そこで、まずは下部のみを開閉できるようにして使い始めてみようと思います。
丁番の固定する場所を削り込みます。
丁番を固定します。
今回使用するのは旗丁番で、扉を上にぐいと持ち上げると、丁番が分離します。
開閉できるようになりました。
仕上げと課題
さて、これで箱型が出来ました。組立は完了です。
この防音室は室内にあるので、手持ちのカメラでは画角が狭すぎて防音室全体を写真を写すことができません。壁紙が綺麗にいかなかったのでお見せするほどのものではありません。
それはともかく。
組立は完了したものの、いくつか仕上げが必要です。
電源
まずは電源の確保です。
今回はこちらを購入しました。
工事現場で使われるような、太いケーブルの延長コードです。
これを防音室外から防音室内へ引き込みます。引き込み自体は壁に穴を空けて引き込むだけですが、この隙間を埋めなくてはいけません。これは次回の課題です。
引き込んだケーブルに更に延長コードを接続します。
このように天井すれすれに固定しました。ロスナイや電動工具の充電器、照明など普段触れないものが主に接続されます。
ドアの取手
次にドアの取手です。
クルミの角材が余っていたので、ジグソーで雑に切り出して、鋸やすりで適当に仕上げました。これも防音室が本格稼働した暁に、仕上げ直す予定です。
こちらも着脱できるようにM8ボルトと鬼目ナットで固定します。
工具の収納
工具の収納も今後の課題です。
さしあたって、このロスナイを固定するために貼り付けている分厚い合板にネジを打って色々と引っ掛けたり、合板をむき出しにしている側面に棚板をつけたりしようと考えています。
【参考】【レビュー】自作防音室のために遮音性の高い換気扇「ロスナイ」導入
照明の取り付け
照明は事前に準備してありました。
見栄えより実用性、というかコストを重視してこちらを選択しました。
本来は「オシャレ照明」用途で使われるものです。
シンプルなE26電球が3つ取り付けられます。価格も手ごろ。
更に、これまた安い電球を入手。流石に聞いたことのないメーカーは心配だったので、聞いたことのあるメーカーのなかで一番安いものを選択しました。
こんな風にぶら下げて固定しただけですが、意外といい感じです。色は電球色であたたか。
更にこちらの写真左下に見えますが、作業台上に別途ライトを設置しました。
これは過去に水槽用に買ったこちらの安いスタンドライトのスタンド部を外して、代わりに木ネジで壁に留めています。
効果測定
最後に仕上げが済んでおらず、穴も隙間がある状態ですが、気になる効果を測定してみることにしました。
追記:仕上げ完了後に測定しなおした結果を掲載しなおしました。
使うのはデシベル計です。
アプリでは精度が非常に悪いという評判が多いことと、デシベル計が思いのほか安かったので買ってしまいました。
デシベル計にはしっかり三脚穴があります。
三脚に固定し、背後から撮影します。MAXホールド機能もあります。
効果測定の結果は以下の通りです。
測定環境
デシベル計からの距離:1.5m
騒音源の地上高:1m
デシベル計の位置から直線距離で1.5mの位置にマーキングし、そこに1mの棒を立てました。この棒の上で工具等を動かして音量を測ります。
マイクの角度で差が出ないように、マイクは真上を向けました。
ちなみに全く音を立てていない状態では37.3dbaです。
測定したのは以下の3機種です。
- 掃除機:アイリスオーヤマ 極細計量スティッククリーナー
- ドリルドライバー:マキタ ドライバドリル DF332DSMX
- ジグソー:ボッシュ ジグソー PST650PE
測定結果
防音室外の音
- 掃除機:70.4dba
- ドリルドライバー:73.8dba
- ジグソー:85.6dba
音量の所感としては、掃除機はそれほどうるさくありません。
この掃除機はコンパクトさ重視のコードレスタイプで、一般的な掃除機に比べても音量が控えめに感じます。
一方でドリルドライバーはやや耳につくキュイーンというような高い音が混じり、掃除機よりうるさいのがはっきりとわかります。しかし、いずれも薄い引き戸で遮られた隣室ではかなり音が減衰されています。料理で使うフードプロセッサーやミキサーなどより静かな音量です。
最後にジグソーは別格です。
もちろん無段階にパワーが調整出来、パワーを落とせば静かですが、MAXでは持っている本人が耳を抑えたくなるような音量です。これは現代の遮音性の高い部屋のなかで使っていることも大きな要因だと思います。このジグソーは当初「静音ジグソーテーブル」を作るために購入した物で、むき出しで使うことは想定していませんでした。
※デシベル計で測ることができる実際の音量と、人間が感じる「耳障りさ」は異なります。
防音室内の音
続いて仕上げが出来ておらず所々隙間のある防音室内で各機械を動かしてみました。
仕上げ完了後の防音室で再計測しました。
- 掃除機:40.8dba (-29.6dba)
- ドリルドライバー:41.6dba (-32.2dba)
- ジグソー:53.3dba (-32.3dba)
今回製作した防音室は、分解・運搬・コストを重視した防音室としてはあるまじき軽量・薄型・分解可能な設計です。分解・運搬を考慮しなければもっと安くて高性能な防音室が作れていました。つまり、防音性能はそれほど高く期待していませんでした。
しかし、実際には平均して 30dba 以上の音量が抑えられています。
実際に防音室内で最もうるさいジグソーを動かしたまま放置し、外に出てみるとグッと音が抑えられており、普通に掃除機を使うよりもずっと静かです。気にならないほどです。ただでさえ静かだった掃除機は、防音室内で動かすと何かちょっと聞こえるな?程度です。掃除機を使っているとは思えないほど静かです。
もちろん実際に木を切れば切削音や振動が発生しますので、ひとつの目安でしかありません。
いずれにせよ、賃貸DIYということで念には念を入れて、今回もより静かな超静音ジグソーテーブルを作る予定です。
自作のサイクロン集塵機も遮音ボックスを作成して静音化する予定です。防音室で防音して、更に防音室内でも機械を防音する予定というわけです。
参考までに、防音室内で掃除機を動かしたままにして、色々な場所で音量を測定してみました。
課題
残す課題は以下の通りです。
- 電源の取り込み口の穴
- ロック機構のない扉
- ロスナイの吸排気口のフィルター
- 工具の収納
- 作業スペースの構築
- 超静音ジグソーテーブルの製作
- 超静音サイクロン集塵機の製作
- 静音ディスクサンダーの製作
なお、下3つは防音室製作がひと段落してから別途製作して別途記事にする予定です。